いじめ防止基本方針
1 いじめの防止等対策のための基本理念
いじめは、人として決して許されない行為である。しかしながら、どの生徒にも、どの学校にも起こりうるという認識に立ち、学校、家庭、地域、その他の関係機関が一体となって、一過性ではなく、継続して、いじめの未然防止、早期発見、早期対応に取り組むとともに再発防止に努めることが重要である。いじめ問題に当たっては、学校全体で組織的な取組を進める必要がある。とりわけ、「いじめを生まない土壌づくり」に取り組む未然防止の活動は、教育活動の在り方と密接にかかわっており、すべての教職員が日々実践することが求められる。
○ いじめの定義(いじめ防止対策推進法第2条1項)
「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」をいう。なお、いじめの発生場所は学校の内外を問わない。
※ いじめの定義の4つのポイント
(1) 行為をした者(A)も行為の対象となった者(B)も児童生徒であること
(2) AとBの間に一定の人的関係が存在すること
(3) AがBに対して心理的または物理的な影響を与える行為をしたこと
(4) Bが心身の苦痛を感じていること
2 いじめ問題の防止等に取り組む組織
いじめ問題に当たっては、「いじめを根絶する」という強い意志をもち、学校全体で組織的な取組を行う。早期発見・早期対応はもちろんのこと、いじめを生まない土壌を形成するための「予防的」「開発的」な取組を、あらゆる教育活動において展開する。いじめ問題への組織的な取組を推進するため、いじめ問題に特化した機動的な「いじめ問題対策委員会」を設置し、そのチームを中心として、教職員全員で共通理解を図り、学校全体で総合的ないじめ対策を行う。また、組織が有効に機能しているかについて、定期的に点検・評価を行い、生徒の状況や地域の実態に応じた取組を展開する。
「生徒指導部員会」(教頭・生徒指導主事・各学年生徒指導担当・養護教諭)、「不登校対策部員会」(教頭・生徒P指導主事・各学年不登校対策担当・養護教諭・生徒指導アドバイザー)の2つの組織を設け、各部員会を時間割の中に位置付けて毎週一回開く。生徒指導全般を扱う「生徒指導部員会」、不登校生徒への援助・支援や、教育相談等について提案する「不登校対策部員会」と、それぞれの役割を明確にして分担することで、生徒指導の取組を活性化する。これにより、生徒指導についての話合いに携わる教職員が各学年2名以上いることになり、より多面的・多角的に生徒の様子やいじめの兆候についての情報交換を定期的に行い、早期発見・早期対応につなげる。また、各部員会での生徒に関する情報を、毎週一回実施する「運営会議」(校長・教頭・教務主任・保健主事・生徒指導主事・進路指導主事・各学年主任・特別支援教育コーディネーター)の場でも確認することで、常に共通理解を図った上で対応する。こうした組織的な取組により、いじめの早期発見・早期対応と再発防止、そして未然防止の取組を確実に行う。
いじめ問題対策委員会としては、上記2つの部員会の日常的な取組を生かした上で、「運営会議」を基盤とし、必要に応じて構成員を加えた形で組織する。
○ いじめ問題対策委員会
【役割】
・いじめを未然に防止するための取組や具体的な年間計画を作成する。
・いじめの相談・通報の窓口となる。
・いじめに関する情報の収集・記録・共有を行う。
・いじめ防止のための指導や対応方針を決定する。
・いじめを受けた生徒と保護者に対する支援を行う。
・いじめを行った生徒に対する指導とその保護者に対する助言を行う。
・いじめ防止の取組についてPDCAサイクルで検証を行う。
【構成員】
校長、教頭、教務主任、生徒指導主事、保健主事、進路指導主事、各学年主任、養護教諭を基本とし、状況に応じて、学級担任や部活動顧問、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを追加するなど柔軟なメンバーとする。
3 いじめの未然防止
「いじめが起こらない学級・学校づくり」等、いじめの未然防止に取り組む。そのため、「いじめは、誰にも、どの学校にも学級にも起こり得る」、「いじめは決して許されない」、「いじめは人権侵害行為である」という認識をすべての教職員がもち、学校教育活動全体を通して、好ましい人間関係を築き、豊かな心を育てるとともに、生徒が安心・安全に学校生活が送ることができ、規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加・活躍できる環境づくりを進めていく。
○ わかる授業づくりと自己指導能力を高めるための支援に努めるとともに、授業規律の確立を進める。
教科主任会、教科部員会、及び相互授業参観等を通して意見交換を活発にし、わかる授業、生徒が主体的に参加・活躍できる授業づくりを進める。さらに、「佐野中令和版授業スタイル」を推進し、学習規律の確立を進める。
授業、学級活動においては、生徒が自らの行動を自分で選択し、相手との関わりの中で行動する活動を通して、自己指導能力(そのとき、その場で、どのような行動が適切か自分で考えて、決めて、実行する能力)を高め、いじめに向かわない態度、能力を育成する。
○ 学級活動や学年・学校行事等を通して、居場所づくり,絆づくりに努める。
生徒会活動や学級活動、学年・学校行事における主体的な活動を通して、生徒が自分自身を価値ある存在と認め、お互いを大切に思い、支え合い助け合う仲間づくりに努める。
市内全小・中・義務教育学校で推進している笑顔プロジェクトとの関連を図り、生徒会活動を中心とした生徒主体の活動を活性化させる。
○ 道徳教育の充実を図り、人間性豊かな心を育てる。
いじめ問題は、他人を思いやる心や人権意識の低下から発生するものである。道徳教育において、心根が揺さぶられる教材や資料を吟味し、いじめの抑止につながる授業を実践する。
○ 地域の方や保護者への働きかけを行う。
いじめの未然防止の取組について、学年・学校だよりやホームページ等による広報活動を積極的に行うことにより、地域とともにある学校づくりに努める。
生徒のボランティア活動(地域行事への参加等)、職場体験、福祉体験等の活動を行い、地域の方と交流を深める機会を設ける。
近年、スマートフォンや携帯ゲーム機などのインターネット端末通信機器を利用する生徒の増加に伴い、SNS利用に起因する問題行動も増加している状況を踏まえ、生徒が通信機器を安全に、正しく利用できるように、携帯スマホ安全教室や長期休業前の指導、保護者の協力を得ながら話合いシートの効果的な活用を図り、家庭での話合いやルールづくりを推進する。
4 いじめの早期発見
いじめは、早期に発見することが、早期の解決につながる。早期発見のために、日頃から教職員と生徒との信頼関係の構築に努めるとともに、生徒の小さな変化を敏感に察知し、いじめを見逃さない認知能力を向上させるように努める。また、生徒に関わるすべての教職員の間で情報共有し、保護者とも連携して情報を収集する。
○ 早期発見の手立て
【日々の観察】
日常の生活の中での教職員の声かけ等、生徒が日頃から気軽に相談できる環境をつくる。休み時間や昼休み、放課後の雑談等の機会に、生徒の様子に目を配り、『生徒がいるところには、教職員がいる』ことを目指し、生徒と共に過ごす機会を積極的に設ける。
【教育相談】
・生徒が悩みやいじめ等について、いつでも教師と相談できる体制づくりを行う。
・全校生徒を対象に定期的に教育相談週間(話そう会:二者面談)を設けて、教育相談を実施する。
・野ばら相談室(オンライン相談室)の体制と案内をすることにより、生徒が相談をしやすい教師と教育相談ができる体制をつくる。
【生活(いじめ実態調査)アンケート】
毎月1回、生活(いじめ実態調査)アンケートを実施し、いじめ認知件数が極めて少なかった場合は、認知漏れがないことを確認する。いじめを受けている生徒にとっては、その場で記入することが難しい状況も考えられるので、実施方法については、記名、無記名、持ち帰り等、状況に応じて配慮し実施する。
【保護者との信頼関係の構築】
日頃から、生徒の良いところや気になるところ等、学校の様子について連絡することを心掛け、保護者がいじめに気づいた時に、即座に学校へ連絡できるよう、保護者との信頼関係を築くことに努める。
5 いじめへの対応
いじめの兆候を発見した時は、問題を軽視することなく、早期に適切な対応をする。いじめを受けている生徒の苦痛を取り除くことを最優先に迅速な指導を行い、解決に向けて一人で抱え込まず、学年及び学校全体で組織的に対応する。また,いじめの再発を防止するため、日常的に取り組む実践計画を立て、継続的に支援する。
○ いじめ対応に関する基本的な考え方
・いじめに係る情報が教職員に寄せられた時は、他の業務に優先して対応する。
・いじめに当たるか否かの判断は、いじめを受けた児童生徒の立場に立ち、組織として判断する。
・いじめを受けていても、本人がそれを否定する場合が多々あることを踏まえ、表面的・形式的に判断することなく、様子をきめ細かく観察するなどして確認する。
・学級担任等が一人で抱え込まず、いじめ問題対策委員会で迅速かつ的確に対応する。
○ いじめ発見時の対応
いじめを認知した教職員は、その時に、その場で、いじめを止めるとともに、いじめを行った生徒に対して毅然とした姿勢で指導を行う。あわせて、直ちに学級担任、学年生徒指導担当、学年主任、生徒指導主事に連絡し、管理職に報告する。また、正確な事実関係を把握するため、複数の教職員で対応することを原則とし、いじめ問題対策委員会の指示のもとに教職員間の連携と情報共有を随時行う。
○ いじめが起きた場合の対応
いじめ問題対策委員会を中心に対応を決定し、以下の対応を迅速かつ組織的に行う。
(1) いじめを受けた生徒に対する支援並びにその保護者に対する情報提供及を行う。
(2) いじめを行った生徒に対する指導及び支援並びにその保護者に対する支援を行う。
(3) いじめは、加害者と被害者のみの問題とする問題とするのではなく、周囲の生徒を含めた全体の問題と捉え対処する。
いじめの対応が指導上困難である場合には、ひたちなか市教育委員会と連携を図り、「いじめ・不登校相談センター」所属の教育相談員、警察や児童相談所等の関係機関と連携するなど、より適切な対策を講ずる。
インターネットを通じて行われる不適切な書き込み等については、被害の拡大を防ぐため、直ちに削除等の措置を行い、必要に応じて、茨城県警察サイバー犯罪対策課や関係機関等の協力や援助を求める。
いじめを受けた生徒が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講じる。
いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認める時には、いじめを受けた生徒とその保護者と相談した上で、ひたちなか市教育委員会と連携し、警察と学校との連絡制度に基づき適切に対応する。
いじめに関する生徒が複数の学校に及ぶ場合には、関係する学校と連携して対応する。また、塾や社会教育関係団体等から、学校以外の場で起きたいじめの連絡を受けた場合には、当該団体等の責任者と連携して対応する。
○ いじめの解消
いじめは、単に謝罪をもって安易に「解消」とはせず、以下の要件を満たすこととする。
(1) いじめを受けた生徒に心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)が止んでいる状態が相当の期間継続していること。この相当の期間とは、少なくとも3か月を目安とする。
(2) いじめに係る行為が止んでいるかどうかを判断する時点において、いじめを受けた生徒が、いじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること。いじめを受けた生徒本人と保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。
○ いじめが起きた後の継続的な対応
いじめが解消したと見られる場合でも、再発防止に向けて、学校全体で引き続きいじめを受けた生徒・いじめを行った生徒への十分な観察を行い、折に触れて必要な支援・指導を継続的に行う。
いじめを受けた生徒に対し、担任を中心に定期的な面談や、日記、手紙などを通して積極的に関わり、その後の状況について把握に努めるとともに、学校の対応状況を定期的に本人・保護者に報告する。
いじめの発生を契機として、職員会議や校内研修等で事例を検証し、再発防止・未然防止のために日常的に取り組むことを洗い出し、実践計画を立て、いじめのない学級づくりへの取組を強化する。
6 重大事態への対応
○ 重大事態(いじめ防止対策推進法第28条)
・いじめにより当該学校に在籍する児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
(1)児童生徒が自殺を企図した場合 (2)身体に重大な障害を負った場合
(3)金品等に重大な被害を被った場合 (4)精神性の疾患を発症した場合 など
・いじめにより当該学校に在籍する児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。(年間30日を目安とする)
○ 重大事態が発生したときの対応
茨城県いじめ重大事態対応マニュアル(平成31年1月)を基に、いじめ防止対策推進法に則った対応を徹底する。
ひたちなか市教育委員会に報告し、教育委員会の指導・助言のもと対応に当たる。
(1) 重大事態の調査組織を設置する。
(2) 調査組織で、事実関係を明確にするための調査を実施する。
(3) いじめを受けた生徒及びその保護者に対して情報を適切に提供するものとし、提供に当たっては、他の生徒等のプライバシー保護に配慮する。
(4) 調査結果をひたちなか市教育委員会に報告する。
(5) 調査結果を踏まえた必要な措置を行う。
重大事態が疑われる場合も、ひたちなか市教育委員会に報告し、教育委員会の指導・助言のもと対応に当たる。
○ 関係機関への支援要請
重大事態の対応において、ひたちなか市教育委員会と連携の上、必要に応じて専門機関や警察等、関係機関への通報を行い、支援を要請する。
いじめを行った生徒に対し、継続して指導しているにもかかわらず、いじめの行為が止まらない場合は、いじめを受けた生徒・保護者の同意を得た上で、躊躇なく警察に相談し、警察の協力を得ながら行為を止めさせる。